「わかったよ。どうしても譲らないのね。何があっても1番はマヨネーズなわけね」 「あぁ、悪いが譲れねェ。こればっかりはどうあっても、な。」 恋した相手のことは、あれやこれやと知りたくなる。 これ、自然の摂理。 「はぁぁ〜・・・・」 文机の前に座しては思い切りため息をつく。 「マヨネーズねェ・・・・」 机に肘をつきながら、ペンの先で手帳とトントンと叩く。 その手帳には色々なことがビッシリと書き込んである。 土方についての情報が、だ。 身長、クセ、好きな色、誕生日、星座、etc・・・ このままいけば自分はこの世で一番の土方通になれる、という自信がある。 「他は普通なのに。問題ないのに。なんで・・・」 よりによって、マヨネーズ。 「愛のこもった料理も全部、一瞬で黄色い奴に変身ですよコノヤロー!」 好きな料理とかも教えてくれたけど、そんなの意味ねーじゃねーか、あのマヨラーが! 「せっかく教えてもらったのに!ホラ!焼きソバでしょ、たこ焼きでしょ、お好み焼きに、ポテトサラダ・・・・・・って全部マヨネーズかけるもんばっかじゃねーかァァ!」 バシン、と思い切り手帳を床に投げつける。 「・・・はッ!いかんいかん、つい理性が・・・」 そして大事な手帳が。 マル秘土方手帳が。 「ごめんネ土方手帳。投げたりしてごめんネ。でもこれも全部君らのご主人様、黄色油分・土方が悪いのよ」 土方に変なアダ名をつけながら、手帳を拾い上げてパッパッ、とホコリを払う。 「しかし我ながらよく調べたなァ・・・・うん。ぶっちゃけ知らなくてもいいことまで調べたしな」 パラパラパラと中身を見ていたは、途中でハッと手を止めた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ない」 1ページ目に戻って、今度はゆっくりと手帳をめくっていく。 「・・・・・・・・・ない、ない。ここにも、このページにも・・・・ない!」 そんな、まさか・・・こんな初歩的な情報を聞いてないなんて。 一生の不覚。 は慌てて部屋の外へ出ていった。 「・・・・・あぁ?趣味ィ?」 土方の部屋。 左手に手帳、右手にペンを持ち真剣な面持ちのに、少し呆れ顔で書類から顔を上げている土方。 「お前何さっきから。ンなこと聞いてどうすんの?」 「どうするってわけじゃないけど、あえて言うなら通としてのプライドの問題っていうか、これからの参考っていうか。」 「参考?」 「そう。愛に満ちた一生を送るための参考。」 「愛に満ちた一生・・・?趣味・・・ていうか何の通?」 まだ腑に落ちない様子で眉をひそめる土方。 「つーか、何でそんなに色々聞きたいんだ?」 当然浮かぶ疑問を口にする。 その問いにはきょとんとした表情をして。 「へ?そりゃだって・・・・・」 好きだから。 と、言いかけたがは口をつぐんだ。 ペンを挟んだ手帳をパタンと閉じ、土方に詰め寄る。 「知りたく、ないの?」 ふと浮かんだ疑問に、不安が多少なりとも煽られたのだ。 「は?」 「私のこと」 表情を変えないままの顔をじっと見る土方。 「好きな人のことって、色々知りたくならない?」 土方さんは、私のこと何も知りたくないの? 小さな声で尋ねる。 もしかして、土方さんって私のことそんなに好きじゃなかったりするのかな、と心が揺らぐ。 「・・・・・・」 何も答えず、ただの目を見据えるだけの土方。 その様子にの不安は更に濃くなる。 え、ちょっと待って。なに、この空気。 とりあえず否定しようよ。 てか、して。 「そんなことない」って言ってよ。 「あの・・・・土方さーん?聞いてます・・・?」 無反応の土方に恐る恐る手を伸ばす。 すると、 「!?」 いきなりガッ、と手首を握られた。 「なるほどな」 「え、な、何。何がなる程?」 見れば土方は先ほどとは打って変わり、ニヤリと口の端を上げていて。 「俺ァてっきりこーゆうのを全員に聞いてまわってるのかと思ってた」 でも違ったわけだ、と土方の笑みはますます深くなる。 「あ、のォ〜・・・」 「お前の言う通りだぜ。確かに好きな奴の事ァ知りたくなるもんだ。」 「え、はァ」 いきなりの土方の変化にうまくついていけないは間抜けた相槌をうつ。 「確か趣味だったな、さっき聞いてきたの」 「・・・・うん。何、教えてくれるの?」 「教えないって誰が言ったよ」 確かに言われてはいない。 いないが。 「俺の趣味はな・・・・」 「あ、土方さん。私これからソロバン塾あるんで。お疲れーっす。」 女の直感。 というか、恋人の直感。 ニヤニヤと笑っている土方に嫌な感覚を覚えて、はそそくさと立ち去ろうとする。 「おいおい、チョット待て」 が、すぐに土方に遮られる。 「もういいです、オチが見えたから」 「見えてねーよ。何も見えてねーさ。いいから最後まで聞けよ」 「いや見えてるから。歩行者の先にバナナの皮が落ちてる時と同じ位オチが見えてる」 じりじりと一定の距離を保ちつつ部屋の中を移動すると土方。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、そこだァァ!!」 一瞬のスキをついて出口の方へ飛びつく。 しかし。 「甘いな」 「うごふッ!?」 後ろから思い切り腹を抱きしめ、引き止める土方。 「ちょ、ヤダァー!何するのよー!」 逃れようとジタバタするも、抱きかかえられて一向に抜け出せない。 「オイ暴れんな。調査コースから調教コースに変更するぞ」 「何その嫌なコース!」 暴れるをものともせず、土方はひょいと片手で取り出した敷布団の上に、そのまま座り込む。 「趣味は愛の営みってことで」 「やっぱりか!ちょ、ヤダ誰かー!助け…むぐ!?」 「馬鹿!デケー声出すな!ほんとに誰か来るだろが!」 慌てて口を手で塞ぐ土方。 「んー!んんー!」 「・・ったく、コノヤロー・・・こりゃお仕置きだな」 逃げられないよう、座ったまま後ろからギュっと抱きこんで、口は塞いだまま。 「・・・・ンッ!?ん、ふ・・・!」 いきなり首筋に感じた生暖かさに、は体を強張らせた。 首に顔を埋め、舐め上げられる快感に背筋が震える。 時折、土方の前髪が頬や首を掠めて、それすら感じてしまう。 「・・・ッ、は・・・やぁ・・」 呼吸が苦しくなってきた所で、まるでそれが分かったかのように手が離された。 が、息を整える間もなく、土方の手が着物の中に侵入してくる。 「・・・なぁ、俺にもお前のこと、教えてくれよ」 「・・・っ!」 右手は袷の中、左手は裾を割って白い太ももをスルスルと撫でる。 「惚れた相手のことは、知りたくなるモンなんだろ?」 後ろから囁かれる声。 熱い吐息が耳をかすめて、は思わずギュと目をつぶる。 「・・・・だったら、俺にも教えてくれよ・・・」 まるで感じる所を探るように、ゆっくりと肌を撫で回す土方。 「・・・んっ・・・」 いつの間にかの着物は肩からずり落ち、足もかなり晒されている。 中途半端に着崩れたその姿は、なんとも扇情的で。 情欲をそそられ、土方はそのまま内股に手を伸ばす。 熱い手がゆるゆると這う感覚に、思わず声を上げる。 「あっ・・・ひじ、かたさ・・・」 「お前の望む通りに抱いてやるよ・・・」 ピッタリとくっついた背中から、彼のぬくもりと、言葉の振動がかすかに伝わってくる。 「・・・なぁ・・・どういうふうにされるのが好みだ?」 耳元でとろける様に囁きながら、土方は袷に差し入れていた手で胸の突起を軽く摘む。 「ひっ、あ・・!?ダメ・・・!」 「・・・ホラ、言ってみろ。優しくされるのがイイか?」 いやらしい笑みを浮かべながら、尚もを刺激し続ける土方。 「ん、あ・・・!」 チリチリとした快感を胸の先端から感じ、たまらず甘い吐息がの口から漏れる。 「・・・それとも、強引な方が好みか?」 からかう様に言いながら左手を腿から秘所へじりじりと移動させ、下着の上から擦れば、土方の隊服の袖を握っていたの手に力が篭る。 いつの間にか額に浮かんでいた汗がポタリと落ちた。 「・・・・何か、答えられそうにねェな・・・」 頭をたれて、快感に耐える様にふるふる震えるの体。 まともな言葉を発する余裕など、当然ない。 「ん、あ!」 うなじにキスを落としながら、下着の隙間へ中指を滑り込ませる。 「ココ、すげェヒクついてる・・・」 「ひっ・・・!や、め・・・!」 トロトロに溶けた蜜口に指の腹をピタリと当て、何度も擦る。 「やあ・・・」 そのじれったさには首をイヤイヤと左右に振る。 「・・・どうして欲しい?ちゃんと言ってみ?」 空いた方の手で、柔らかくの唇をなぞりながら問いかける土方。 その要求には頬を染める。 言いたくなんて、ない。 けれど焦らされて頭がどうにかなってしまいそうだった。 理性よりも、快楽に支配された体の方が正直だった。 「・・と・・・・」 「うん?」 「ちゃ・・と、ナカ、に・・・い、れ・・・・」 肩で呼吸をしながら、途切れ途切れに紡がれた言葉に土方は口の端を上げた。 「よく言えました」 「ひ、あ!」 ズルリとナカに挿入された指の感触には背をのけ反らせる。 「ん、ふ・・・やぁ・・」 緩急をつけて指を抜き差ししながら、の下着をスルリと脱がせれば、土方の指を伝った透明の液がシーツにポタポタ染みを作る。 焦らされた分、腰から突き抜けるような快楽が走り、それから逃れようとは必死に身を捩る。 「ヤらしい格好・・・」 後ろからその姿を覗き込むようにして、満足げに呟く土方。 「・・・ん、ああ!!」 ぐむ、と蜜口がさらに大きく開かれる感触には目を見開いた。 ソコに差し込まれた指の本数が増えたのだ。 「・・・どうも、強引な方が好みっぽいな。なァ、?」 土方のその声を、は霞がかった意識の遠くで聞いていた。 体を後ろの土方にもたれかけ、頭を彼の肩に預けた状態で、部屋の天井の隅をボウっと見つめる。 「あァ・・・あ・・・」 土方の指を誘い込むように、ソコがヒクヒクと収縮を繰り返しているのが自分でも分かる。 「これァ、もう1本くらいいけるな」 「・・・っも、ヤ・・・ンあぁ!」 更に指をツプリと挿入し、抜き差しを始める土方。 丁度顔の横にきているの耳をぺロリと舐めたり、甘噛みしながら。 「やめ・・・ひ、あ・・・・!」 内壁の弱い部分をかすめたり、時に強くこすられる感触に頭がついていけない。 「ン、も・・・・」 「いいぜ、イけよ・・・」 「 グッ、と奥まで指を突き入れられ、の視界が真っ白に弾けた。 「・・・・・・・・・・しまった、やりすぎた・・・・」 腕の中でグッタリと意識を失ったを抱きながら、後悔の言葉を呟く土方。 どーすんだよコレ。俺の方はまだスッキリとも何ともしてないんだぞ。 と、そう思っても、これはまさに自業自得というもので。 「・・・ハァ・・・ま、仕方ねェか」 いつもより善がる姿も見れたことだし、今夜はこのまま眠ることにしよう。 寝かせたにそっと布団をかけてやり、自分もその中に潜り込む。 と、ふと床に転がっているの手帳が目に入り、何となくその手帳を手に取りパラリとめくる。 「・・・コイツこんな色々調べてたのかよ・・・」 びっしりと詰められた文字の羅列。 その最後の行、「趣味」と書かれた後は未だに白いまま。 チラリと横で眠るの寝顔を見、一瞬笑みを浮かべる土方。 手帳に挟まれたペンを手に取り、何やらサラサラと書き込み、またポンと床に戻す。 「さて、寝るか」 電気を消し、の額にキスを送り土方は目を閉じた。 次の日、屯所では修正ペンを手にして怒るの姿が見られたそうな。 ************************************** 実は、好きな食べ物の所にも彼女の名前を書き足していた、という裏話もある。(いらない) 土方さん、何か変態みたい・・・ |