うらうら日差しの心地よい昼下がり。 ちょうど昼食を取り終わって銀時はソファーの上に寝転がっていた。 いつもと違い、目は閉じることなく起きたままで。 『「甘い」時間は一石二鳥』 「10分遅れ。」 新八も神楽もいない、珍しく静かな部屋の中でポツリとつぶやく。 カンカンカンカン・・・・ 軽快に階段を上ってくる足音。それを聞いて思わず口元が緩む。 誰が来たかなんて、顔を見なくてもすぐに解る。鳴るぞ鳴るぞ・・・・・ ピンポーン ・・・・・・・・やっぱり。 ソファからむくりと起き上がって扉を開ける。 「ちゃん。チャイム鳴らさなくていいって言ってるでしょー?」 「だって・・・・留守かもしれないし。」 「留守になんてするわけないだろ。ちゃんが来る大切な日に。」 「もう・・・大げさなんだから。」 困ったような文句を言いながらも、顔を赤くしては部屋に入る。 ・・・・・可愛いなァ。コレくらいですぐ赤くなるんだから。 甘いセリフや雰囲気に未だに慣れない様子の恋人。 そんなを銀時は心底可愛いと思っていた。 「それより遅れちゃてごめんね?スーパーのレジが昼時で混んでたから・・・」 「すごい荷物だな。電話くれりゃ迎えに行ったのによ。」 「平気平気。これくらい。」 ニコニコ笑いながらは両手に持つ袋を軽く持ち上げる。 「それより早く作るね!できれば3時まで出来上がったらいいなァー。」 「なんで3時?」 「オヤツは3時に食べるものだからです!」 「プッ。何だソレ。子供みたいでしゅねーちゃんは。」 「ああ!!何よそれェ!またそうやって子供扱いして…!!」 「はいはい。銀さんもう糖分欠乏症になりかけてるから。待ってたのよー?ちゃん。」 「もー!そうやって、すぐはぐらかす・・・!!」 そう。今日、銀時はにケーキを作ってくれと頼んでいたのだ。 (本当はの顔見られれば何でもいいんだけどさ・・・やっぱどうせなら・・・ねェ?) は料理もお菓子作りもとても上手い。 の顔を見られた上に手作りのケーキでも食べられれば銀時にとっては一石二鳥だ。 「じゃあ台所借りるねー?」 エプロンをつけながら台所に入って行くを見ながら、 (いいねぇ〜いかにも恋人っぽくて。いや、むしろ新婚っぽいか?) なんて内心思ったり。 カンカン、カシャッ。 カラカラカラ・・・ 台所からは手際の良さが伺える音。 ソファーに腰をかけて、鼻歌を歌いながらクルクルよく動くの背中をボンヤリと眺める。 しばらく時間が立つと台所からは甘い匂いが漂ってきた。 「よぉーし、スポンジ出来上がり!!あとはイチゴと生クリームと・・・あ、紅茶のお湯も沸かしてー・・・」 (・・・・プッ。一人ごと言ってら・・・) 時々聞こえてくる声もなんだか可愛くて、こっちはこっちで一人で笑ってしまう。 しばらくはそのままを眺めていたが ふと思い立った様に銀時は体を起こす。 「銀ちゃーん、そこの袋からイチゴ取ってくれるー?」 銀時が動いた気配に気づいたのか、後ろを向いたままでが頼む。 「(・・・後ろに目でもついてんのか?)・・・・ハイハイ。これね。これどこに置きゃいいの。」 「そこの棚に置いといて。」 「んー。」 言われた通りイチゴをの横にある棚に置くと・・・。 「キャッ!?ちょっと銀ちゃん!?」 後ろからをフワリと抱きしめた。 「へェ・・・生クリーム作ってる最中か。」 「ちょっと銀ちゃん・・・!動きにくいから。」 「かき混ぜてるだけなんだから大丈夫大丈夫。」 「もォ〜。」 抱きしめる力をほんの少しだけ強くする。 折角抱きしめられたのに、振りほどかれちゃたまらない。 「それよりクリーム、ちゃんと甘くしてよ〜?」 「したよ。この前銀ちゃん、出来上がってるのに砂糖加えるんだもん。」 「んじゃ味見してみ?」 「えー?さっきしたんだけど。」 「ダメ。ちゃんと銀さんの前で証明して下さい。」 はいはい、と言いながらはボウルの中の生クリームを指ですくって口に運ぶ。 銀時は後ろからを抱き締めたままその様子をジッと見る。 フワリとの髪からも甘い匂い。 (ヤベェ・・・マジいいわコレ。) そんな風に思いながらの顔を覗き込む。 「・・・ど?」 「うん。こんなものだよ。」 「じゃあ銀さんも味見v」 「はい、どうぞ。」 は生クリームの入ったボウルを銀時に向ける。 「いやいや、そうじゃなくてさ、こっちでね。」 「!!! ちょっと・・・・!?」 銀時はの手をつかみ、その指でクリームをすくわせて、そのまま細い指をクリームごとぺロリと舐める。 少しヒヤリとする指の温度に、何だか妙に保護欲と愛おしさを覚える。 「ちょ、銀ちゃん・・・!!」 「ん〜やっぱ1回じゃ分からないわ。・・・・・もっかい。」 「ぎ、銀ちゃ・・・ふざけるの止め・・・・・・んッ・・・!!!」 今度はクリームを自分ですくい、文句を言おうとしたの口に放り込んで、すぐさま口を自分のソレで塞ぐ。 「んッ・・・・んん・・・・・・!!」 あまりに突然のことで驚いたのか、はアッサリと銀時の舌の侵入を許してしまった。 歯列をなぞり、より味わい易いよう深く口付ける。 「・・・・・ん・・・は・・・・ッ」 何度も何度も角度を変えては 驚きと混乱で強張るの舌を、自分の唾液とクリームの甘さで溶かし出すようにからめる。 「・・・・・は・・・・・・・ぎ、ん、ちゃ・・・・・・・」 「・・・・・・・・・これならオッケーだな。すげェ甘い・・・。」 「銀ちゃ・・・・・・ひゃッ!?」 そのままをギュッと強く抱きしめて、エプロンの紐を解きながら首筋に顔をうずめる。 「ぎ、銀ちゃん止め・・・!!こんな真ッ昼間から・・・!!」 「ん〜?」 聞いているような、いないような、曖昧な返事を返して口付けを続ける。 着物の上から左手での柔らかい胸を手で包むようにして。 この行為の『続き』を予想したのか、はたまらず叫んだ。 「〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!も、もう来ないから!!!」 「!!!!」 その言葉に、着物の袷に伸ばそうとしていた手がピタリと止まる。 「・・・・来ない。それ以上やったら・・・し、しばらく万事屋来ない・・・・ッ!!」 顔を真っ赤にして、必死の様子で言葉を紡ぐ。 ・・・・・・・・まずい。 以前にも実は同じようなことがあって、その時は本当には2週間ほど顔を見せなかったことがある。 ・・・・・止める、か? 男の立場から言わせれば、ここまできといて身を引くのも情けないような。 でも、 それ以上に、 にこれ以上すねられるのも、何日も会えなくなるのも、我慢ならない。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・んだよォ〜・・・・・・」 名残惜しそうに腕を解いて、流しにもたれかかって固まったままのの傍を離れる。 それを見て、はホッと肩をなでおろした。 「何でだよ・・・夜ならよくて、何で昼間だとダメなんだよ・・・・昼の台所でのアバンチュールが燃えるのによォ〜」 止めはしたものの、納得はしていないのか、まだブツクサ言っている銀時を横目に クリームをスポンジに塗り、イチゴをカットしてのせていく。 途中、予期しなかったハプニング(?)はあったものの、無事ケーキは完成。 出来上がったケーキを箱に詰める。 「えっ、ちょっと何してンのちゃん?」 「何って・・・箱詰め?」 「オイオイオイ!!え、食べるなってこと!?何、銀さん2重におあずけなワケ!?」 「2重って・・・・・。」 半泣きの銀時に半ばあきれつつも、そんなに楽しみにしてくれていたのかと、嬉しくも思える。 「銀ちゃん。」 さっきのことはもう気にしてないよ、と言うように。 二コリと笑って時計と窓を順番に指さす。 「今、3時前。外は晴れ。お外で食べたくないですか?」 ーーーー15分後、街中にはケーキの箱を腕にぶらさげてスクーターを運転する銀時と、 後ろに乗って、落ちないよう銀時に抱きつくの姿が。 「ひゃあ〜風が気持ちいい〜!!こんな日に外で食べるケーキは最高だよ〜きっと!」 「・・・・・・そうねー。」 「あ、なァに、その気のない返事。ケーキいらないの?」 「あ、いや。そうじゃなくてよォ・・・・・・・・・・・・・さん?ちょっと遠回りとかしない?」 「え、何で?」 「勿体無いから。」 「勿体無い?」 「・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・お〜い、銀ちゃん??」 「・・・・・・・・・・・・・あ〜いいわ〜・・・・この柔らかい感触。降りるの勿体ねェ〜。」 「?」 は一瞬ワケが解らず目をパチクリさせたが、すぐにその意味に気づいて。 「いい!いだだだだ!!痛い!髪引っ張んないでチャン!ハゲる!!銀さんハゲちゃうから!!」 「銀ちゃんの変態!!変態天パ!!変なことばっかり考えてるからそんな歪んだ毛になるんだよ!」 「何気に傷つくなオイ!!」 そんなやり取りしながらも、 『ケーキの次は絶対を喰ってやる』 と内心誓う銀時だった。 ー・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・ 初銀さんです。 ありがちネタでごめんなさい。でもやっぱ銀さんならこの手のものは1つは書きたい。 |